随想・雑感 進む地球温暖化防止の切り札、植物力

進む地球温暖化防止の切り札、植物力

前評議員 新名 惇彦

2014年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)で地球温暖化は人類の化石資源利用の拡大による大気中のCO2増加の結果と結論付けられた。温暖化で小麦、トウモロコシが大幅に減収し、今後10年毎に世界の穀物生産は最大2%ずつ減少する。海面上昇による土地の消失で21世紀末までに年間148兆円の経済損失(この年の日本の一般会計予算は95兆円)がある。

最大のCO2排出国、中国と米国は削減に消極的で未来への希望がかすむ。そのせいで中国では大雨、コロナ汚染の発祥地、武漢の上流から上海まで洪水に見舞われ世界最大のダム、三峡ダムも崩壊の危機に瀕している。米国でもカリブ海の巨大ハリケーンに毎年襲われ、カリフォルニアでは大規模山火事で莫大な損失がある。これを私は自業自得と言う。

日本上空の二酸化炭素濃度の変遷

添付図は気象庁が日本上空のCO2濃度の変遷を都市化の影響の少ない3地点で定点観測したデータである。いずれの地点も上下動を繰り返しながら1967年の350ppmから2017年には450ppmに達した。上下変動の上は4月、下が10月で、春から秋にかけ15ppm下がる。つまり夏の植物(樹木)の光合成でCO2が下がるのである。

地球大気中のCO2の炭素は7,000憶トンであるが、陸地の植物が蓄えている炭素は3倍の2兆1,000億トンである。つまり樹木を増やせばその3倍のCO2が大気から減るのである。地球規模での大規模植林は温暖化を阻止する。乾燥地、酸性土壌、アルカリ性土壌、塩類集積地などの悪環境に強い樹木を遺伝子組換えで作る研究が進んでいる。遺伝子組換え植物を毛嫌いする日本であるが、世界中で講演しても温暖化が止まるのなら大歓迎だと言われる。

〈奈良先端科学技術大学院大学〉

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