随想・雑感

大豆が社会貢献出来る事は?

評議員 小林 誠

 私が述べるまでもなく、大豆は日本においてはアミノ酸スコアが100の、貴重なたん白源として豆腐、納豆、味噌、醤油などの伝統食品や加工食品として、美味しく食べられてきた歴史があり、その意味では日本人に対して大きな貢献をして来たと言えます。特に、飢餓に苦しんだ時代には数少ない優良なたん白資源として大豆はとても大きな貢献が出来た事でしょう。今後の地球規模の人口増加に伴い、水や飼料作物などの資源の枯渇で肉や乳の枯渇も予想される中で、大豆のたん白源としての貢献もさらに大きなものになると思われます。その場合、大豆を伝統的に食べ慣れていない地域の人々に対し、いかに大豆を美味しく食べてもらうかが課題となってきます。また、食糧危機が予想される一方で生活習慣の変化に伴う生活習慣病も地球規模で拡大を続けています。これらの生活習慣病の予防食品として大豆は大きな社会貢献が出来る可能性が広がっています。この分野でも大豆を食べる習慣のない地域の人でも美味しく食べられる加工食品の開発と普及が不可欠になります。

 最近、アメリカと中国に行く機会がありました。アメリカでは、相変わらず豆乳や豆乳ヨーグルトがスーパーの売り場に数多く並び、豆腐も普及しています。更に、学校給食で動物性たん白の肉や卵や乳以外にも豆腐が新たなたん白食材として許可されました。健康上の政策です。大豆がアメリカの食生活で貢献できる追い風が間違いなく吹いています。現在、不二製油のアメリカのグループ会社ではアメリカの学校給食市場に大豆(豆腐)加工食品の展開に尽力しています。また、中国では大豆の発祥の地でもあり、過去から豆腐類や豆乳などの大豆加工食品は充分に普及していますが、不二製油の中国のグループ会社では美味しくて安心安全な日本式の大豆加工食品の展開に注力しています。キーワードは「美味しさ」と「安心安全」です。今後、私どもは東南アジア、南アメリカ、アフリカへと誰でも美味しく食べてもらえる大豆加工食品の展開を目指しています。大豆の社会貢献を地球規模でと考えています。

 本財団では長年、大学や各研究機関の先生方の大豆に関する種々の研究に対し研究助成をさせていただいていますが、特に生理機能の研究については数も多く、人の健康や疾病予防で大豆が貢献出来る報告も蓄積されています。深く感謝しています。しかし、少しでも多くの世界中の人々に美味しく食べていただく大豆食品を開発し、社会に貢献しようとするならば、大豆の生理研究以外に、世界各地で栽培出来るそれぞれの加工目的に合わせた美味しい大豆の研究、大豆を美味しく加工出来る技術の研究、大豆加工食品を美味しく調理する研究など数々の研究がとても重要だと思い至ります。大学や各研究機関の先生方におかれましては、大豆の社会貢献の為に研究の幅を更に広げていただけたらと紙面を借りて切にお願い申し上げます。

〈不二製油株式会社 取締役〉

  • 随想・雑感