随想・雑感

財団の役割、特に研究助成について

理事 渡邉 篤二

 不二たん白質研究振興財団が発足して2年を経過し、その本来の使命である大豆たん白質研究の振興を目標に研究助成の事業が順調に進んでおりますことは誠にご同慶の至りであります。20年前大豆たん白質栄養研究会の設立以来今日まで西村政太郎不二製油株式会社社長(現名誉会長)、故井上五郎先生始め多くの方々の熱意と努力に思いを致さざるを得ません。わが国伝統の大豆食品が国民の栄養に寄与してきたことは広く認められてきたところですが、大豆たん白質そのものを栄養学の立場から正しく評価することは研究会設立当時必ずしも十分ではなく、また国際的にも大豆たん白質に対する関心の高まりでその栄養評価を求める声が高まって来ておりました。この様な状況下で発足した研究会は栄養学の第一線の先生方の賛同と参加で着実な歩みを進めたわけであり、この分野の研究の道筋を誤りなく描く上に大きな役割を果たして来ました。

 その後大豆たん白質が具えている様々な物理的、化学的性質が明らかにされて、その種類、構造と大豆食品が持つ性状との関係が示され、更にまた栽培,育種などを含めたバイオテクノロジー分野の研究が進む中で研究会は名称を大豆たん白質研究会に衣替えし、研究の助成分野を広げたのであります。当時既に藤巻・荒井両博士が提唱された食品の一次、二次、三次機能の解析と研究が進行しており、大豆たん白質が三次機能として持つ広範な生体調節機能や二次機能として示す香り,味,咀嚼性,色彩感などの嗜好性も取り上げられつつありました。そして研究会へは新進気鋭の方々を含む広い分野の研究者の応募が数多く寄せられ、大豆たん白質研究の広がりとこれからに研究の深化を約束するものでありました。

 こうして大豆たん白質研究会は大豆たん白質の総合的研究の推進役を負うことになりますが、平成9年4月(財)不二たん白質研究振興財団へと発展し、多くの視点からその基礎を確立することになりました。

 今後大豆たん白質はわが国だけでなく世界のたん白質源としてその重要性を増すことは間違いないと思われます。一方では先進国に於ける健康問題、他方では発展途上国での栄養問題を考えますと、当財団を通じる大豆たん白質研究の充実とその成果情報の世界に向かっての発信こそが強く期待されるところであります。

 最後に今日まで研究会に続き財団の運営に尽力されておられる西村理事長、物心両面での支援を惜しみなく提供される不二製油株式会社安井社長並びに同社に心からの敬意を表します。

〈前東京都立食品技術センター所長〉

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