随想・雑感

益々高まる財団の意義

理事 前田 裕一

 今の(財)不二たん白質研究振興財団の前身である「大豆たん白質栄養研究会」が設立されて、今年で早29年になる。この研究会は、故西村政太郎名誉理事長の熱意から、徳島大学医学部の故井上五郎先生をはじめとする諸先生方の御尽力により設立されたものであるが、その歴史とともに財団が助成する大豆たん白質に関連する研究も確実に進展した。

 ご存知のように、大豆には大豆たん白質はもとより、イソフラボンやサポニン、トリプシンインヒビター等の多くの生理機能物質が含まれており、それらの有用性が財団の助成した研究からも明らかとなっている。また最近の研究では、大豆たん白質のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)予防に関する様々な栄養機能が明らかになっており、大豆たん白質が、日本国民のみならず人類の健康と生命及び食生活の向上に寄与するものと注目されている。また一方では、大豆たん白質の物性機能の解明や改良も進み、その利用範囲も着実に拡大している。その結果として、前身の研究会が設立された1979年の大豆たん白質の国内生産量が2万1千トンであったのに対して、今では倍の4万2千トンに増えており、大豆たん白利用食品も約倍になっていると推定できる。

 現在の世界人口は67億人で今後も増え続けると考えられる。国連の推定では2050年には92億人まで増加すると報告されている。一方昨今の食糧供給の事情は、中国やインドなどの新興国での消費の増大、バイオエネルギーに利用されるトウモロコシやサトウキビの需要増等から来る作付け割合の関係から世界の全ての食糧が高騰しており、食糧入手が困難になってきている。大豆のような食糧が高騰しているとは言え、大豆たん白質は、動物性たん白質に比べて圧倒的に生産効率が良く消費するエネルギーや水も少なくて済む。大豆たん白質を食品に高度利用しその消費を増進することは、今まさに世界的に重要な喫緊の課題と言えよう。

 日経ビジネスの記事によると、オランダのフードバレーの中核的存在であるワーヘニンゲン大学リサーチセンターのティメルマン氏は言っている。「日本は食糧資源が少ないことを憂える必要はない。日本は早くからヘルシーな食の分野での商品開発が進み、市場も発達している。ヘルシーな食に更に磨きをかければ良い。」つまり今日のような食糧状況にあって、資源を持たない日本が食の分野で世界的に貢献できるのは、今こそ大豆のようなヘルシーな食糧の機能を更に追及し付加価値の高い食品に加工する、研究と技術にあると考えられる。

 この財団の事業の目的として、「この法人は、たん白質に関する研究及びこれに関連する研究の奨励、援助を行い、もって学術及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。」と定款に定められている。食糧が高騰し、食糧難の時代を迎えるにあたり、生産効率の良いしかも良質で健康に良い大豆たん白質の機能研究や、美味しい食品として加工する技術の研究を助成する本財団の意義は、益々重要になると結論できる。

 これらのことを考えると、この財団の設立に御尽力頂いた諸先輩方の先見性に改めて頭が下がる思いがすると同時に、この財団の事業から得られた成果を更に実用化し、世界の人々の健康で豊かな食生活に寄与しなければならないと強く感じる次第である。得られた貴重な成果を実用化まで持っていくのはメーカーの責務でもあり、それがこの財団の価値を更に高めることにもなるであろう。

〈不二製油株式会社 取締役〉

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