随想・雑感

これからの財団運営について思う

前常務理事 谷口 等

 私は本年の3月末を以って財団を退任しました。

永年にわたり理事・評議員・選考委員の先生方にはもとより、助成研究に参加し研究頂いた多くの先生方には本当にお世話になり感謝に耐えません。厚く御礼申し上げます。

 財団の出捐会社である不二製油の関係者として理事を務めさせて頂いただけに不二製油のたん白事業との係わりを少しお話させて頂きます。

 1960年代に不二製油は脱脂大豆での商品化・濃縮たんぱく質での商品化の経験を経て分離大豆たん白質の商品化に辿り着く長い道程がありました。経営のトップ、中でも当時の西村社長の並々ならぬリーダーシップに導かれたものです。

 目標は特長ある物理化学的な機能を持つ食品素材として、売れて利益の上がる商品の確立にありました。なかなか採算の取れる事業にならず長い間叱咤激励を受け、また会社には迷惑を掛けながらも我慢をして頂きました。

 その間欧州での食肉加工に利用出来るミルクたん白に匹敵し勝るとも劣らない機能を確立すべく市場での調査研究と完成を果たし、その傍らFDAからのGRASの認定を受けるなど市場の理解と認識を得ることなどにも心を砕きました。

 欧州で認められたことが日本国内の販売を容易にしました。同時に植物たん白に関する日本農林規格の制定、日本植物蛋白食品協会の設立、更には200海里水域設定など世界のたん白資源の逼迫などを背景に順調に市場は拡大して行きました。

 当時、市場では皆様ご存知の通り「組み立て食品」と言う言葉が登場しましたが、不二製油もその頃即席麺市場に大豆油を含まない保存性の良いパーム油と分離大豆たん白とで組み立てられた「味付け乾燥油揚げ」や「冷凍のがんもどき」等特長ある商品の販売をして参りました。

 大豆に関する学会や世界会議との繋がりは、早くは1964年の富士の河口湖畔Hotel Mt. Fuji での世界会議を皮切りに多くの世界会議や国内での学会に積極的に参加して知識の導入を進めました。

 財団が生まれます前に何とか大豆たん白質に関する栄養の研究を行う研究会を作ろうとの意志から、今までにもこの時報に諸先生が何度か紹介されています様に1979年当時徳島大学の教授であられた井上五郎先生を中心にして私設の「大豆たん白質栄養研究会」が創設され、研究課題の募集と研究の助成が始まりましたが、実はその一年前に米国Colorado州のKeystone市で開かれた大豆たん白の研究会に先生とご一緒させて頂きました。その時の報告を受けた西村社長が当時の日本の実情を憂えられ早く会を設立する様何度か叱られながら先生にお願いに上がったことが忘れられません。

 1997年に研究会を引き継いで設立された財団の時代を含めて約24年間大豆たんぱく質への助成研究成果の果たす役割は世界でも大きく評価されています。

 その一つに近年FDAが分離大豆たんぱく質の生理機能の一つとしてコレステロールの高めの人にはそれを下げ、心臓疾患の予防に役立つ機能を認めて表示の許可を与えていますが、これらの研究会の成果から得られた事実に刺激されて、その他の多くの研究データを組み合わせて評価されたものと判断します。

 厚生省が「食品」の定義を「食品素材」にも広く解釈していたならば、「分離大豆たんぱく質」は米国より早く日本で特定保健用食品の認可を得ていただろうと思いますと残念でなりません。

 所で、最近の日本経済のデフレからの脱却は各企業の活性化に掛かっていると周知は一致しています。そのためにもこれからは産学官が一体になって世界をリードし、消費者の皆様が買い求めたい商品の開発に全力を傾注して行くことが求められます。

 財団の運営においては基本財産も最近の金利では全く利子を生まず、基金を増やす寄付金での追加余裕があればその資金を利用してより大きな研究課題に取り組むことも求められます。

 食品の分野でも規制の緩和が求められます。既成概念にとらわれることなく、新しく開発された商品には新しい視点に基づいて認可を与えることも求められるでしょう。

 たん白質素材自身の研究と共に美味しく食べるための「組み立てたん白食品」「美味しく食べる味付け」の研究も必要でしょう。

 世界をリードする財団の益々の発展を祈って止みません。

〈元不二製油株式会社専務取締役〉

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