随想・雑感

大豆たん白質研究の広がり

選考委員長 吉田 昭

 大豆たん白質栄養研究会が不二製油株式会社西村政太郎社長(当時)、徳島大学名誉教授、故井上五郎先生らの御尽力により発足したのは1979年のことであるから、すでに20年の歳月が経過した。1997年からは(財)不二たん白質研究振興財団として名実共に一層充実発展していることはまことに喜ばしい。井上先生にはかねてより親しくしていただいていたこともあって、研究会の初期から私も研究助成をしていただき、本財団には本当に長い間お世話になってきた。心から感謝している次第である。20年をふり返ってみて、毎年これ程多くのこの分野の研究者が集まり、大豆たん白質研究の成果が発表され、活発な討論が行われてきたことは世界でも珍しいことであり、私にとっても貴重な体験であったと考えている。同時に、これらの研究が世界の大豆たん白質研究を大きく推進してきたことを誇らしく感じている。

 発足当時の“大豆たん白質栄養研究会”の名前が示すように、初期の研究発表は大豆たん白質の栄養評価やアミノ酸補足による栄養価の改善、大豆たん白質の血清コレステロール上昇抑制効果に関するものが多かった。これらの研究から大豆たん白質がヒトに対して動物性たん白質に劣らない優れたたん白質であることが実証された。さらに、虚血性心疾患の重要な危険因子である血清コレステロール濃度の上昇を抑制することも多くの研究者によって確かめられた。その機構の解明も多面的に進められ、分離大豆たん白質は多種類の加工食品に利用され、特定保健用食品としてもわれわれの食生活に大きく貢献している。

 大豆たん白質のこのような性質のほかに、エネルギー・脂質代謝における特性も明らかにされ、肥満の防止に関する基礎および臨床的研究、さらに老化促進動物を用いた老化防止効果に関する研究も報告されてきた。大豆食品が虚血性心疾患をはじめ、がん、骨粗鬆症の抑制にも有効であることが、近年、外国でも大きな関心が持たれ、疫学的にも、実験的にも多くの研究が行われるようになってきている。大豆たん白質そのものだけでなく、イソフラボンをはじめ大豆たん白質に関連した生理活性物質が、生活習慣病と呼ばれる多様な疾病に広く有効であることも驚くばかりである。大豆たん白質研究を通して、アレルギー、免疫に関する科学の発展も目覚ましい。

 食品学、食品工学、育種分野の研究も遺伝子工学の発展と相俟って、この20年間の進歩は真に目を見張るものがある。このような発展を研究会発足当初、どれだけ予測できたであろうか。21世紀を目前にして大豆たん白質研究のさらなる飛躍を期待したい。

〈名古屋大学名誉教授・名古屋文理短期大学学長〉

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