随想・雑感

不二たん白質研究振興財団設立によせ

理事 田中 武彦

 昭和53年頃であったかと思います。今は亡き井上五郎先生から、「不二製油株式会社の西村政太郎社長(当時)より大豆たん白質研究の支援と強化を考えたい旨のお申し出を戴いたのでお受けしたいと思うが、その具体化案をどう考えるか」とご相談を受けました。

思い起こしてみますと、当時は科学技術庁の資源調査会において会長の芦田淳先生を中心として「四訂日本標準食品成分表」の作成の膨大な作業が進められていた時期でありました。その作業の一環でもあったと思いますが、大豆たん白質の栄養学的な研究は主として各種の大豆たん白質食品の栄養価の再検討に重点がおかれていました。その結果、大豆加工食品のたん白性性食品としての評価が完全に確立されたと申してよいかと考えられます。また一方でK.K.Carrollらの研究により大豆食品と血清脂質との関連について注目され始めていた時期でもありました。これらのことを考え合わせますと大豆たん白質の研究が新しい方向へと進展するであろうことは明らかな状況であったと云えます。

こういう情勢下で、広く学際的視野のもと「大豆たん白質栄養研究会(平成3年より大豆たん白質研究会)」が不二製油株式会社の後援により昭和54年に発足致しました。当時は大豆たん白質の研究者の数は未だ非常に少なく、研究課題の応募を積極的にお願いしないとその予定していた数には達し得ない程であったと記憶致しております。その後、我が国における大豆たん白質研究は目覚ましく発展し、数多くの優れた研究が生まれてきているのは申すまでもありません。

「研究会」の活動もまた発展を続け、毎年の助成研究の成果の発表会も年々充実し、また節目での講演会にも多くの参加者を迎えました。このような「研究会」の活動が認められ、昨年4月「不二たん白質研究振興財団」の設立が許可されました。このことは「研究会」のそれ迄の成果が高く評価された結果であり、誠にご同慶に堪えません。

「食」の文化人類学者によると日本人は大豆の加工・調理技術に非常に長けた民族であるとのことです。確かにたん白質性食品として大豆加工食品は我々の日常の食卓に広く用いられています。大豆食品が健康との関連、とくに高脂血症やがんの一次予防においてその機能に注目を集めてきている現在、新しい観点から大豆食品の更に深い浸透を図る必要があります。また一次予防のみならず、広く医療の場においても大豆食品が注目されるべき知見が集積されつつあります。

このような観点を踏まえますと、本「財団」の役割は疑いもなく今後益々重要なものとなるでありましょう。

研究者の一員として、西村政太郎理事長はじめ不二製油株式会社の皆様によるこれまでのご支援に御礼を申し上げるとともに、今後もよろしくお願い致したいと存じます。

〈大阪大学名誉教授〉

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