随想・雑感

企業の社会的責任

前監事 乾 一良

 不二製油の法定監査の責任者を務めさせて頂いた関係から平成15年より2年間監事を仰せつかってまいりましたが、この3月をもって監事を交替いたしました。法定監査も公認会計士法の改正により責任者のローテーション制度が導入されたことにともない、平成16年3月期で不二製油の監査責任者を交替しておりますが、10年にわたり、さまざま方々とお付き合いさせて頂きました。御交誼に改めて感謝している次第です。

 ところで、雑感ですが、ライブドアの騒動以降「株主価値経営」がもてはやされ、最近の新聞や経営雑誌の紙上でよく目にします。あまりにも株主価値創造の経営、株主利益重視に偏重しすぎるのではないかと思っています。我々が経営学を学んだ頃は会社の社会的責任が議論されていました。それは、株主を会社の所有者と見るのは狭すぎるのであって、経営者、従業員、取引先、地域住民、消費者なども株主と同様に重要な利害関係者ととらえることが必要というものでした。暴利を貪らず、利益を社会に還元し、社会的な存在として企業は、社会的責任を持った活動をしなければならないのは言うまでもありません。ちなみに経団連が平成16年に公表した「企業行動憲章」には、企業が広く社会にとって有用な存在であり続けるために、10の原則を掲げています。ここで10の原則をすべて紹介しませんが、その内、企業活動において社会的責任を果たすため特に重要と考える点を紹介しますと、

1 )社会的に有用な製品・サービスを開発、提供し、消費者・顧客の満足と信頼を獲得する、2) 公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行う、3) 積極的に社会貢献活動を行う、4) 社会への迅速かつ的確な情報の公開と説明責任を遂行する、等々あたりまえのことですが、このあたりまえのことができない会社が昨今、あまりにも多いといえるのではないでしょうか。

 そういう意味で、不二製油が社会貢献の役割を担って大豆たん白及びこれに関連する研究の奨励、助成を行い、もって学術の発展と国民生活の向上に寄与すべく平成9年に財団を設立され、満8年経過し財団が順調に発展し、成果を挙げられていることは企業の社会的責任の一環であると評価できると思います。今後とも関係者のご努力とご協力で益々財団が発展されんことを期待しております。

〈あずさ監査法人代表社員〉

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