大豆たん白を中心とした特定保健用食品
評議員 中村 治雄
ライフスタイルの内容に基盤を置いた病態、あるいは内容の改善による病態の是正など、一般に生活習慣病と総称されているが、それらの発生予防、改善に果たす大豆蛋白食品の意義は大きい。
従って、その普及への努力とニードは計り知れないところであるが、今後、より詳細に有効性、安全性について解明しておく必要があり、現に一部厚生労働省自身も関心を持っているところでもあろう。
以下、その点についての雑感を述べるが、参考になればと願っている。
1)小児での問題
従来、一般に特定保健用食品として認可されるために提出している資料の大部分は、成人あるいは高齢者から得られた試験結果が主であって、対象に小児が含まれている成績はきわめて少ない。
しかし、現実として、形態が特殊でない限り、食品は一般に家族全員が多かれ少なかれ摂ることが多く、成人のみとして摂取される可能性は多くはない。
しかも、生活習慣病の芽は小児期よりすでに存在していることを考えると、小児における有効性と、安全性は広く確認されなければならない。特に成長期にある年令の人達で安心して、どこまで摂取できるかの確認が欲しい。
小児期よりの食生活の中に、大豆蛋白摂取が根付くことが、将来の日本人における生活習慣病を少しでも減らすことに役立つものと思われる。
2)併用の問題
きわめて数多くの特定保健用食品が登場してきている。しかも同様の適応をうたった食品も多い。
さらに摂取する人にとっても確実な効果を期待しており、そのために同様の適応のある食品を組み合わせて用いることもあろう。その際、相加あるいは相乗作用があるかどうか、安心してその組み合わせ食品を併用できるかどうか、など、現在この点の検討は不十分である。
さらに繊維性食品を併用する時など、当該食品の主作用に対してどのように働くのか、有効性を減弱させることはないのか、若しあるとすれば、その様な併用・組み合わせは意味のないことになる。
この様な背景において、筆者らはパイロットスタディーを実施中である。すなわち、コレステロールを低下させる大豆蛋白に、同じクレイムを有するジアシルグリセロール(コレステロールを下げる)を併用摂取して、現在その有効性、安全性を検討している。
目標症例数には未だ達していないが、少なくとも現在迄に得られた成績では、βシトステロール添加ジアシルグリセロールの単独に比し、大豆蛋白併用摂取にコレステロール低下作用がより明らかであり、有効性は増強されている。また、安全性についての検討において、特に問題となり得る自覚症状、臨床検査値異常はみとめられず、ほぼ安心してこの組み合わせ摂取は可能である。
今後、この様な併用について多くの検討がなされ、大豆蛋白に何を併用した際には問題なく、効果の増強をみるか、何を併用した場合に有効性の減弱、安全性に問題が起こり得るかなど、広く検討されなければならない。
この問題は大豆蛋白に限らず、多くの食品について言えることであり、主だった組み合わせについては検討されなければならない。また特定保健用食品を認可する際には、その様な検討結果も附記されておくことが必要であろう。
〈財団法人三越厚生事業団〉