随想・雑感

大豆を使って学生実習

評議員 入谷 信子

 実習で学生に大豆から豆腐を作らせ試食させると「こんなにおいしい豆腐を食べたのは、はじめてです」と言う。クッキーを作るのに、とれたおからを混ぜて“おからクッキー”をつくらせ試食させると再び“おいしい!”と感激する。そこで大豆の食品学的、栄養学的知識とともに、不二たん白質研究振興財団の報告会で聞いてきた大豆のたん白質、食物繊維、イソフラボンをはじめとする微量成分などによる脂質代謝改善効果、肥満防止の基礎および臨床的研究や、循環器疾患、がん、更年期障害、骨粗鬆症の抑制などを最新の情報としてカッコよく話すと、学生はいつもより熱心に聞く。そして彼女らにとって大豆の印象は“おいしくて、ヘルシー”となる。さらに大豆たん白質が使われている“ヨーグルト、がんもどき、ハンバーグなど”たくさんの加工食品を紹介する。若いときにこんな実習をして講義を受けるとおいしさと共に大豆たん白質などの効用が強くインプットされ、その子供達にも引き継がれるであろう。食品、栄養の知識は、主に女性を通して家庭内に、食生活に持ち込まれ、生かされるものと考え、女子学生を教育している。

 大豆たん白質研究会(不二たん白質研究振興財団の前身)には長い間研究助成をして戴いた。大豆たん白質食でラットを飼育すると一連の肝脂肪酸合成系酵素(脂肪合成の律速段階)の発現と酵素活性を抑制し、血漿、肝臓のトリアシルグリセロール値が低下した。コレステロール値も低下した。成熟した遺伝性肥満ラットに大豆たん白質を投与したとき、肥満が緩和された。そして肥満遺伝子の発現が低く、肥満遺伝子産物の血漿レプチン値も低かった。

 一方、UCP(uncoupling protein)1、2、3をクローニングし、栄養条件による変動を調べた。特にUCP2はヒトやその他の哺乳動物の臓器に広く発現し、UCP3は骨格筋に多量発現しているのでエネルギー代謝との関係で注目されている。私たちはUCP2 mRNAが大豆たん白質食により、特に白色脂肪組織で強く発現することを見い出した。また、thyroxineから triiodothyronineへの転換も促進された。すなわち、大豆たん白質の摂取により、脂肪の合成が抑制されるとともにエネルギー代謝が昂進され、肥満抑制の方向に働くように思われる。作用機構はまだ明らかでない。

 不二製油株式会社西村政太郎社長(当時)のご発案で昭和54年に大豆たん白質栄養研究会が設立、その後それを母体に不二たん白研究振興財団が発足して通算22年を経過した。この間、本研究会では研究分野が広がり、それぞれの分野で充実し発展した。大豆のたん白質、食物繊維、イソフラボンをはじめとする微量成分などによる脂質代謝改善効果、肥満防止や、循環器疾患、がん、更年期障害、骨粗鬆症の抑制など種々の生理作用が次々に明らかにされた。これらの病気の多くは、今、重要課題になっている生活習慣病である。大豆および大豆製品はまさに多くの生活習慣病の予防に有効なものであり、何とも魅力的は食品である。

 西村政太郎名誉理事長様、安井吉二理事長様はじめ社員の方々に、研究会や評議員会に出席してお会いしているが、いつも皆様方の素朴な暖かさ、誠意、熱意を感じる。このような会社はますます発展するであろうと感じている。不二たん白質研究振興財団に心からの敬意を表し、ご厚情に深謝し、限りない発展をお祈りいたします。

〈帝塚山学院大学人間文化学部〉

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