随想・雑感

大豆たん白質研究発展のこれからの展望

評議員 小石 秀夫

 昭和54年(1979)設立された大豆たん白質栄養研究会は、大豆たん白質研究会を経て平成9年(1997)、不二たん白質研究振興財団に引き継がれた。その間400件以上の研究が助成され、日本の大豆たん白質に関する研究は大きく発展した。

研究会の初代委員長井上五郎先生、先生を支えていた新山喜昭先生は、京都府立医科大学の吉村壽人先生の許で、ヒトのエネルギー・たん白質代謝の研究に従事し、私もお手伝いしていた。井上先生が大阪市立大学に移られてからは、私達を呼ばれ、先生の指導の許に同様の研究に明け暮れた。昭和40年井上先生が新山先生とともに徳島大学に移られた後も、私は井上先生の後を継ぎ、大阪市大でヒトのたん白質・アミノ酸栄養に関する調査や実験を重ねていた。

この研究会が設立された昭和54年には、私はパプア・ニューギニアでの栄養調査を始めており研究会に参加できなかったが、第2期の昭和55年からは毎年参加させて戴き、第10期まで9回の助成を受けた。静岡県立大学に移ってからも1度助成を受けている。

平成7年頃、西村理事長より突然、新しく作る予定の“不二たん白質研究振興財団”の評議員になるよう要請された。恩師の井上先生が苦心して維持発展に貢献された研究会につながる事業であるし、できるだけお手伝いしたいと考えお受けする事とした。

1980年研究会誌Vol.1の“発刊に際して”のなかで井上先生は、研究テーマとして(I)栄養学的評価に6項目、(II)脂質代謝異常と大豆たん白質に4項目、(III)Elemental dietへの応用に3項目、(IV)食品学的基礎研究、(V)その他、を挙げられている。さらに“実際に食品を用いて補足効果を期待するというような、食生活の実際に即した面からも検討して頂ければ有難い”と述べられている。

装いを新たにした“大豆たん白質研究”の1巻および2巻を見ると研究内容が精緻になり、学問の進歩、研究環境の変化が窺われるが、井上先生が挙げられたテーマからすれば4番目に挙げられた“食品学的基礎研究”が主体になっている様に見受けられる。勿論、これは食品としての大豆たん白質の本質を知る上で欠かす事のできない重要なテーマであり、大きな成果を上げてきたが、井上先生の述べられているように、もう少しヒトの“食生活の実際に即した面からも検討して頂ければ有難い”と考えている。

毎年優秀な研究者の皆さんが興味深い研究を発表され、大豆たん白質研究会は誇るべき成果を挙げてきた。大豆食品が日本人の食生活に大きな役割を果たしている事には現在も変わりはない。たん白質研究振興財団の研究助成により、これからの研究がヒトの食生活、あるいは病気の予防にさらに貢献する事を期待している。

〈大阪市立大学名誉教授〉

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