随想・雑感

財団を去るにあたって

前理事 新山 喜昭

 私はこのたび一身上の都合で本財団の理事を退くことになりました。1979年不二製油株式会社の西村政太郎社長(当時)のお肝煎りで、同社のご支援の下に発足した大豆たん白質栄養研究会で学術委員になりましたが、以後この会を通じて多くの新知識を与えて頂き、私にとり誠に実りある20年でした。

当初の委員は井上五郎先生(初代委員長)を始め、芦田淳先生、藤巻正生先生その他錚々たる方々ばかりで、実績のない私は場違いの感を持ちました。広く日本各地から選ばれた委員は研究領域も出身大学も異なり、このことはその後の研究会発展の一因となりました。研究会設立後の何年かは助成研究は委員推薦の研究の中から選ばれましたので上記の委員構成は広い分野の研究を助成する結果をもたらしたからです。

私は井上先生のご指名で研究会誌の作成に関係することになり、やっと委員としての責めの一部を果たすこととなりました。当初、助成研究の報告をまとめた会誌(現在発行されているもの)以外に大豆たん白質の“解説付き文献集”が補遺として刊行されました。これは川村信一郎先生(香川県明善短期大学:当時)のご尽力によるもので10年余り続きましたが、残念ながら先生のご他界で中断し現在に至っています。Chemical Abstractsの編集委員だった先生はこの抄録誌に掲載の大豆たん白質に関する論文を集め、その解説をされましたが、抄録のみでは分かりにくい時は、その論文のコピーをしばしば私に依頼されました。またご自身、徳島大学の図書館に足を運ばれることも多く、大層な努力をされました。先生は文献学の権威でしたのでこの会誌補遺の作成にはうってつけの方でした。余談になりますが、先生は著名なエスペランティストでした。そのためもあってか東欧圏の論文の引用も多く、編集、校正に携わった私は馴染みの薄い文字や著者名に戸惑いました。文献検索にご来徳の折、食事を共にし、アルコールが入ると上機嫌になられた先生を懐かしく思い出します。会誌編集は現在井上先生門下の岸恭一先生、山本孝史氏(不二製油)らに引き継がれていますが先生も陰ながらお喜びのことと考えています。

それにしても20年前に発足した研究会が不二たん白質研究振興財団へと発展したのは西村理事長さんのご尽力は勿論のこと、不二製油株式会社の強力なご支援の賜ですが、このユニークな財団活動を通じ大豆たん白質研究が進展し、ひいてはこれが人々に役立つことを心から望んでいます。

終りにお世話になりました西村理事長さん始め、ご関係各位に謝意を表し、併せて皆様のご健康と不二たん白質研究振興財団並びに不二製油株式会社のますますのご発展を祈念して擱筆いたします。

〈徳島大学名誉教授〉

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